アステラス健保 健保だよりNo.45
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 子どもたちのこころは、成長する中でときに大きく揺れ動くことがあります。多くは正常な成長の中で見られる一時的なものですが、こころの病気がかくれている場合もあります。今回は、子どもに比較的多くみられるこころの病気と、その初期サインのとらえ方についてご紹介します。 子どもたちに起きてくるこころの病気は、その原因や性質によって大きく次の3つに分けられます。①子どもを取り巻く環境や周囲の人々との関係などから起こるストレスに対するこころと体の反応ストレス反応、適応障害など②子どもの知的ないし情緒的な発達のゆがみや遅れに起因するもの広汎性発達障害(自閉症)、注意欠陥多動性障害、精神遅滞、学習障害など③ストレスや発達の問題とは無関係に起きてくる精神機能の不調統合失調症、うつ病など 大人と比べた場合、こころと体の両面で複数の変化が起きたり、症状が典型的でない場合もしばしばあります。また、①のような場合でも、原因について自分で分析や表現ができないことも少なからずあります。このため、周囲の大人が問題を把握できず困惑してしまうことがあるようです。 ストレスが大きくなると、言葉でうまく伝えることができなくなる状態に陥り、むしろ言葉以外にさまざまなサインが現れることが多いものです。このようなサインは、多様な領域に現れます。●睡眠「布団に入っても、なかなか寝つけないようだ」「朝、なかなか起きられない」●食欲「ごはんを食べたがらない」「四六時中食べている」「偏食がひどくなっている」●体調「体がだるそう」「原因不明の腹痛や頭痛、めまい、吐き気などを訴える」●行動「学校に行きたがらない」「何もしないで長い間ぼんやりしている」「よくけんかするようになった」 左下にあげたサインの中で「学校に行きたがらない」等は、必ずしも病気のサインでない場合もありますが、勉強や友人関係で、本人にとっては深刻な悩みを一人で抱えたことによる心身の不調(適応障害)であったり、場合によっては、③の統合失調症やうつ病、不安障害等のはじまりというケースも含まれている可能性があります。 大切なことは、「今まではこんなことはなかった」「どうも普段の様子と違う」など、いつもと違うことへの気づきです。前述のようなサインが見られたら、子どもからまず話を聞いてみましょう。話を聞く際には、リラックスできる雰囲気をつくりましょう。助言や励ましは後回しでも構いませんので、まずはじっくり子どもの話に耳を傾けましょう。そして、本人がつらいと思う症状が長引く場合は、専門家に相談してみることも含めて考えてみましょう。 家庭の中では問題なく過ごしていても、集団生活に入って初めて見えてくる子どものこころの問題もあります。特に②については、就学後に気づかれるケースも多いようです。学校生活でよくとらえられるものとして、下記のサインがあげられます。●勉強「科目間で成績のばらつきが大きい」「知的な問題はないように見えるのに、学校の成績だけがふるわない」●運動「おそろしく不器用」「服のボタンを1つもかけられない」「左右を揃えて靴を履くことができない」●友人「遊び相手に興味を示さず、一人遊びに没頭する」「順番を待つことができない」●集団生活 「朝起きられない」「授業中じっと座っていられない」「課題や活動に必要なものをなくす」 原因が学校生活にあったとしても、家庭の中でしか変化をとらえることができない場合がありますし、原因が家庭にあったとしても、家庭で虐待等の問題が生じている場合は、学校での変化を見逃さないことが重要となる場合もあります。 子どもの変化が見られたときには、家庭と学校の双方が密に連絡を取り合い、子どもの全体像をとらえる工夫と努力を行うことが大切です。10 春は気候の変化だけでなく、学生生活、職場などにおいても大きな変化が起きる季節です。環境の変化に慣れるまでは、あせらずにマイペースを心がけましょう。 今年度の「めんたるへるす通信」では、ライフサイクルを子ども、若年、中高年、老年の4つの時期に分け、それぞれの時期における主要なメンタルヘルスの問題と、気をつけておきたいポイントをお伝えしていきます。 初回は「子どものメンタルヘルス」についてご紹介します。アステラス通信子どもたちのこころの病気家庭でとらえやすいサイン学校でとらえやすいサイン

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