アステラス健保 健保だよりNo.48
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 老年期は、「老成」という言葉が示すように円熟期と考えられています。しかし、下記のように身体能力が低下する一方で、大きな出来事に遭遇する試練の時期でもあります。今回は老年期における心身の変化と、よくみられる心の病気について解説します。○身体機能の低下…20代と比べて60代では筋肉量は約15%、肺活量は約30%減少するといわれています。体内時計の変化などにより早寝早起きとなり、睡眠は短く、浅くなります。○職場・家庭面の変化…退職、配偶者との死別など「喪失」を体験する機会が増えます。病気の体験も「健康の喪失」と考えられます。これらはうつ病等のきっかけになることがあります。【最近のトピックス】【認知症】脳や全身の疾患が原因で、記憶・判断力を含む精神機能に障害がおこり、社会生活が困難になる状態を指します。半数以上を占めるのがアルツハイマー型認知症です。脳にアミロイドベータというたんぱく質が蓄積し、最終的には神経細胞が脱落し、脳が萎縮します。初期は昨日の夕飯が思い出せないといった近時記憶障害が中心で、この時点では古い記憶は保たれています。進行すると、服を着る、食事をとるなどの日常的な動作が出来ない、言葉が出てこないといった問題もおき、古い記憶も失われていきます。一般的には認知症を来たす疾患は治らないといわれていますが、中には早期介入によって治療可能な疾患も含まれています。【うつ病】老年期のうつ病は、抑うつ気分、意欲低下、不眠、食欲低下といった一般的なうつ病症状も現れますが、不安や焦燥が強く、自殺の危険が高いという特徴があります。また、記憶力の低下を訴え、認知症と診断されることもあります。【せん妄】何らかの原因で脳機能が低下し、意識が曇った状態を指します。症状は多彩で興奮状態となり、幻覚や妄想が現れることが多いですが、記憶力の低下などが前面に出ると認知症と捉えられることがあります。元気がない、口数が少ないといった様子が目立つこともあり、この場合はうつ病と間違われることがあります。せん妄は軽度の意識障害ですが、背景に重篤な身体疾患が出現していることがあり注意が必要です。老年期の心身の変化老年期に多くみられる心の病気【認知症・老年期うつ病・せん妄の比較】認知症(アルツハイマー型)老年期うつ病せん妄抑うつ気分うつ病ほど強くない強い症例による記憶の障害最近のことが思い出せない、昔の記憶は保たれる過大な訴え・客観的低下なし順序立てて思い出すことが出来ない時間・場所の理解時間の見当識から障害されていく理解している理解出来ないが一時的フレイル筋力や心身の活力が低下した状態を指し、“frailty(虚弱)”という英語に由来します。自然な老化とやや異なるのは、1つの問題から悪循環が形成され、放置すると要介護状態に移行することで、健康と病気の間の段階といえます。例えば「入れ歯の不具合」→「食生活悪化」→「体力・筋力低下」→「活動性低下」→「認知機能低下」→「セルフケア能力低下」→「歯の健康、食生活の悪化」といった一連のプロセスです。フレイルは適切な介入によって改善可能と考えられています。「自然に体重が減った」、「歩くのが遅くなった」、「疲れやすくなった」、「以前よりおっくうがる」などの変化は要注意です。6 冬の寒さもいよいよ本番。部屋を暖めることだけに注意が行きがちですが、風邪やインフルエンザに感染しにくい環境をつくるには、湿度は50%~60%以上を保つことが大切です。今年度の「めんたるへるす通信」では、ライフサイクルを子ども、若年、中高年、老年の4つの時期に分け、それぞれの時期における主要なメンタルへルスの問題と、気をつけておきたいポイントをお伝えしていきます。最終回は「老年期のメンタルヘルス」についてです。アステラス通信

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